Low-Vision Wedding

2021. 12. 31

結婚式の披露宴では、非日常的な催しや新郎新婦の豪華な衣装を見ることが参列者の楽しみのひとつである。しかし、これらは視覚に依存しているものが多く、目が見えにくいロービジョンの参列者はそれらの楽しみを享受することが困難である。そこで、映像音響システムを活用し、イベントの様子や場所を認識できるようにサポートするシステムを提案する。実際にロービジョンの参列者やロービジョンの新郎が出席する結婚式の披露宴でシステムの試験導入を行った。

本プロジェクトでは2つの支援システムを提案する。

1つ目は、複数台のカメラを用意し、ビデオ会議ツールでそれぞれの映像を配信することで、参列者が手元の端末でイベントの様子を確認することができるシステムである。イベントに合わせて映像が切り替わる配信番組のような画面と、複数の固定視点の画面を用意した。ロービジョンの参列者は見たい映像を選択し,自身の端末を目に近づけたり,スマートフォンのアクセシビリティ機能で拡大したりしてイベントの様子を見ることが出来る。

2つ目は、会場内に4台のスピーカーを設置し、音の発生場所を切り替えることで、披露宴で行われるイベントの場所を認知できるシステムである。披露宴でイベントが行われる場所にスピーカーを設置し、司会者の声が出る場所を切り替えることで、ロービジョンの参列者はイベントが行われている場所の音を定位しイベントの方向を理解することが出来る。

本プロジェクトはロービジョンの新郎である岩田朋之さんを始め、多くのロービジョンの方々や披露宴会場のスタッフの方々と共にシステムの検討・開発を行ってきた。また、実際にロービジョンの方が多く参列する岩田さんの結婚式で上記のシステムを使用し、参加したロービジョンの方にアンケート調査を行った。本プロジェクトの背景やシステムに関する詳細は後日公開予定である。

One of the pleasures for guests at a wedding reception is viewing the event and the gorgeous outfits. However, many of these events are visually dependent, making it difficult for guests with low vision to enjoy them. This study proposed two systems to assist in such a situation: one is a real-time event viewing system that uses a video conferencing tool to allow guests with low vision to view the event on their own devices, and the other is an event location localization system that uses multiple loudspeakers. Several people with low vision used these systems at a wedding reception held in Japan, and a questionnaire survey was conducted on eight people with low vision to evaluating the usability of the systems. Based on the experimental results, guests with low vision could enjoy participating in the wedding reception by using the proposed system.

プロジェクトメンバー:貞末真明,鈴木一平,田中賢吾,浪川洪作,西村千恵子,落合陽一

現場監督:貞末真明
撮影:鈴木一平,田中賢吾
スイッチャー:浪川洪作
システム計画:鈴木一平,浪川洪作
司会:飯田浩司(ニッポン放送),師岡正雄(フリーアナウンサー)
音響システム:浪川洪作
音響オペレーション:頃安祐輔
マニュアル:西村千恵子

リハーサル応援:飯嶋稜,頃安祐輔,丹羽遼吾
当日応援:岡村柾紀,頃安祐輔,丹羽遼吾,百田涼佑
事前レクチャー:岡村柾紀,貞末真明,西村千恵子,田中賢吾

当日映像提供:髙村安以(株式会社テレビマンユニオン)
協力:アニヴェルセル株式会社,アニヴェルセル 東京ベイ(2021.9 グランドフィナーレ),CA SOLUA 葛飾 メンバーの皆様

Zoomのメイン画面に表示される新郎新婦。サイダーを注いでクラレットパンチを完成させた後,カメラに向かってポーズを取っている。
Zoomの視点選択画面。左上,イベントの進行にあわせて切り替わるメイン画面。右上,新郎新婦のいる高砂に固定されたカメラ。下,司会に向けて固定されたカメラ。
奥のスクリーンに投影されている映像と同じものが手元のスマートフォンに表示されている。
手元のスマートフォンで高砂の様子を表示し,スクリーンショットを撮る参列者
拡大鏡を使ってスマートフォンの画面を見る参列者
顔を近づけてスマートフォンの画面を見る参列者
披露宴会場内に設置された,イベントの方向から音が出るスピーカー
イベントの方向から音が出るスピーカーを制御する,スタッフの手元
司会者のマイク。会場全体に流れるマイクと,イベントの方向から音が出るマイクを2本持っている。
入場する新郎新婦と,新郎新婦の移動にあわせて音が出ているスピーカー
左から,司会の いいだ こうじ さん,もろおか まさお さん
司会の原稿。映像が投影される際には,スクリーンまたはデバイスへの注目をお願いする旨が記載されている
映像・音響システムを操作する研究室のメンバー
Zoomの配信を管理するコンピュータ
点字の原稿を読みながらスピーチをする参列者
スマートフォンで映像を見ながら涙する参列者

Masaaki Sadasue. et al. (2022). Development and Evaluation of Systems to Enjoy a Wedding Reception for People with Low Vision. In: Stephanidis, C., Antona, M., Ntoa, S. (eds) HCI International 2022 Posters. HCII 2022. Communications in Computer and Information Science, vol 1580. Springer, Cham. https://doi.org/10.1007/978-3-031-06417-3_79