アニメーションについて考えてみた.物象的実体を離れることが今年後半のテーマであったから,その過程で時間について考えていた.アニメーションとは本来Animaを入れこむことであるし,ゾートロープもZoe(生命)をTrope(回転させる)ことだから,生命からは離れられないかもしれないと思った.
しかし,生と死について考えると,0のとき生きていて,1のときに死んでいるとするならその間は? アニメーション自体は0の集合体で1を作り出すことに似ている.
だから,止まった時間を使って,動いている時間を作り出すその行為を批評的に捉え直すこととは,複数の時間軸から切り出された”時間”を使って,主観時間を作り出すことなのではないかと考えた.アニメーションは時間を切り取り,時間を再び再生する,時間を描くことで作り出す.実写映画は時間軸に関してはあまり変更することはないが,アニメーションにとってはその時間軸自体が表現対象である,それが静止物体に動きをもたらすからだ.
この装置は,LEDと時計,レンズという基本ユニットが12個並び,時計の構造を持っている.自己相似形を持つ構造に,光が順々にともることで,メタ的な時計を構成している.光が当てられた時計はその光を反射し,エピスコープを構成して天井側に鏡越しの時計を映し出す.LEDの光が12個のアニメーションを作り出すことで,その鏡越しの時計の進行速度は変わる.
エピスコープは実像投影機であり,フィルムを使用しない投影の形である.フィルムを使用しない映画の形として,時間軸分の実体がならび,その個数分のエピスコープが存在すれば,そこに投影する映像は動き出す.
そうやって構成した時計のアニメーション.鏡時計,そして複数の時間軸から主観時間を構成するという意味で,アリスの時間と名付けた.