落合陽一准教授が主宰するデジタルネイチャー研究室は,ユビキタスコンピューティングの先に「計算機自然 (Digital Nature)」の到来を見据えています.計算機自然では,人と機械,物質世界 (Material World) と実質世界 (Virtual World) の間に,今までの工業化社会よりも多様な未来の形が起こりうると考えられます.本研究室は,そういった物質性と実質性の間で,計算機応用のもたらす様々な選択肢を想定し,それらを計算機科学的に実装することで,産業・学問・芸術に至る様々な問題解決に挑戦し,人・計算機・自然における新たな文化的価値の創成を目指します.
VISION - Version (2023)
科学についての社会的認知が広まる以前、世界は魔術化の中にあった。人間が他の動植物と同様に生物進化の果てに今の姿になったことを信じている人は稀だっただろう。現代でも信仰によっては進化論的な仮説を信じていない人々もいるだろう。この価値観・自然観と同様に、今後計算中心の世界観に移行していくと我々は考えている。問いを立てるとするならば、「進化の末に人がこの地上に生まれた」と考える人の数と「人間も含め万物は計算している」と考える人の数のどちらが多いだろうか。自然に対する計算機発展以後の認識として、自然を計算機として捉える世界観は徐々に拡大を続けていると我々は考える。
我々が提唱するデジタルネイチャー(計算機自然)は、計算機科学視座に立った自然観である。あまねく存在する計算機とその計算機を通じた理解が進展した時代におけるコペルニクス的転回によって自然観がそもそも変化した状態を想定している。計算機自然では計算機も人も万物が包含された計算可能で自律的な自然を対象とし、研究領域としては物質世界と実質世界の間に新たな関係性を築き、計算可能なものと計算不能なものの間を橋梁することを目的としている。
我々、デジタルネイチャー研究室およびデジタルネイチャー開発研究センターでは、ユビキタスコンピューティングの先を見据え、人と機械、物質と実質の間に多様な選択肢を提示し、産業・学問・芸術における問題解決に取り組んでいる。元来の自然も、人間も、デジタルネイチャーの一部として捉える考え方を元に、我々は研究対象としての新しい自然を眺め、探求を続けている。その価値観に基づけば、人類も動植物も宇宙も時空もある種の「計算装置」であり、人間とAIに線引きするのではなく、どちらも計算機や計算の一要素として分け隔てない見方で捉える。もちろん予測可能・予測不能、計算可能・計算不能の差はあれど、計算という価値観に基づいて統合された超自然の一部であるとして森羅万象を考えている。我々にとってその自然は未来に突然現れるのではなく、今もすでに存在し、人々に計算中心の自然観が認識が広まるとともに社会インフラも同時に発展していくものであると考えている。
私たちの生活の中にコンピュータを感じさせないくらい、よりコンピュータが当たり前の存在になりました。
現在は"人間とAI"というように線引きされますが、科学技術がさらに発展していくと、それらが分け隔てなく扱うことが当たり前になるような世界が到来すると私たちは考えています。 このような世界を私たちは「デジタルネイチャー」と呼んでいます。
例えば、手書きでイラストを描けなくても今は人間が言葉で指示を出すと生成AIが代わりに描いてくれます。これが次第に、言葉で指示を出さなくとも私たちの動きや感情を読み取って、AIが思った通りのイラストを描いてくれるくれるかもしれません。このように、人間もコンピュータも含めた世界中のあらゆるモノが、互いに尊重し合って対話ができるようになるということです。
このような変化によって、人間中心の考え方ではなく、世界中のあらゆるモノがコンピュータ(=計算機)という新しい視点が必要になりました。
この新しい考え方は、哲学者たちが言葉と思考の枠組みを使って予測していましたが、科学者たちはさらに、実際に世界中のあらゆるモノに数値を与え、言葉と思考の枠組みを超えて、実際にコンピュータとして扱えるようにすることができたのです。
私たちはこのような世界の変化を予測し、人間やコンピュータ、元来の自然など世界中のあらゆるモノを計算機として扱い、質量をもつ物質的なものと質量を持たない実質的なもののような、計算可能なものと計算不能なものの間をコンピュータで結び研究を行っています。
デジタルネイチャーグループは、この新しい自然「デジタルネイチャー」の世界を描き、変わりゆく人間性、文化、芸術、科学技術を深く探求する研究室です。
updated 2023.12.19
【展示】日本科学未来館 計算機と自然、計算機の自然
日本科学未来館 3階(未来をつくる)にて落合陽一准教授が総合監修を務める「計算機と自然、計算機の自然」が展示されております.
現実世界と計算機の中の世界を区別することがなくなる未来、 私たちはどんな自然観や世界観を抱き、どんな「問い」を見出すのでしょうか。
🔗日本科学未来館常設展(未来をつくる)「計算機と自然、計算機の自然」
【講演】デジタルネイチャー :多元主義と包摂性の融合
Digital Nature:Embracing Pluriversalism and Inclusivity
本講演は、日本文化とデジタルネイチャーの融合、持続可能性と多様性を探求し、テクノロジーと文化の交差を通じて持続可能な未来を模索します。
🔗SXSW 2023 Official Session / Partner Programming「デジタルネイチャー :多元主義と包摂性の融合」